読書好きなタカヤです。
『アンネの日記』に引き続き、アウシュヴィッツ関連の本を読みました。
ヴィクトール・フランクル著『夜と霧』です。
アウシュヴィッツ関連の本の中では有名な本で、古くからの名作となっています。
内容は、強制収容所で生き抜いた心理学者の体験記録。
アウシュヴィッツ収容所博物館唯一の外国人ガイド「中谷剛さん」もおすすめしています。
心理学者らしく、自身の体験を冷静に分析しているのが特徴。
今回は、『夜と霧』の概要やレビューを書いていこうと思います!
『夜と霧』の概要
まずは、『夜と霧』の概要から。
著者はヴィクトール・フランクル。
1905年3月26日生まれ – 1997年9月2日没。
オーストリア出身の精神科医・心理学者です。
ナチスの時代に、「ユダヤ人である」という理由から収容所へ送られました。
本作『夜と霧』では、自身が収容された体験を冷静に分析して綴っています。
1956年に初版が出版されてから、60年以上に渡ってロングセラーとなっている作品。
歴史背景
第二次世界大戦時、ドイツ軍ナチスがユダヤ人を迫害していました。
「ユダヤ人」というだけの理由で逮捕され、収容所へ送られるのです。
収容所では働ける者が働き、働けない者は虐殺されていました。
与えられる食事も酷く、1日の食事はほとんど具のない水のようなスープとわずかなパンだけ。
そのため、餓死や病死する者も非常に多かったです。
収容所の中で一番規模の大きかった「アウシュヴィッツ収容所」では、死者数が110万人と言われています。
そんな残酷な収容所が、ドイツを始めとした周辺国にいくつも存在していました。
当時のユダヤ人迫害の実態は諸外国に伝わっておらず、ドイツが降伏した後に収容所を発見した外国軍は、その悲惨な光景に驚きを隠せなかったそうです。
『夜と霧』のあらすじ
オーストリアのウィーンで著名な精神科医・心理学者だったヴィクトール・フランクルは、一般の囚人として強制収容所へ送られます。
収容所では、毎日過酷な肉体労働をして病や飢餓、寒さ、衛生環境の悪さに耐えながらの生活。
収容された直後は、多くの人が楽観的な気分になります。
「きっとすぐ解放されるはず」
「思っているよりも悪くない生活だろう」
事実、到着した場所にいた囚人は健康的で、楽しそうに生活していました。
しかしその囚人たちは、囚人を監視・指導する立場にある囚人だったのです。
同じユダヤ人の囚人の中でも階級がつけられ、上流階級にいる囚人には自由や健康的な生活が与えられていました。
実態は、食事もほとんど与えられず、過酷な労働と監視官に怯える日々。
数日経ち収容所での生活に慣れてくると、悲惨な環境に対する慣れが発生します。
目の前で人が死ぬことにも慣れ、何も感じなくなったそう。
「慣れ」は人間の防御反応でしょう。
自分の精神を正常に保つため、無感覚にすることで守ろうとするんですね。
先が見えない収容所生活の中で、ある時「クリスマスには解放される」という噂が流れます。
しかしクリスマスを過ぎても解放されないことがわかると、気力がなくなり多くの人が力尽きてしまいました。
未来を失った人は、生きる気力を失ってしまうんです。
収容所生活では、収容者にとって現実逃避する時間も大切でした。
フランクルは、バラバラに離れてしまった妻と会話する想像をして、気を紛らわせていたそう。
時には収容所内で音楽会が行われるのですが、中にはそれを見に行くために貴重な食事の配給を放棄する人もいたとか。
「現実を忘れることができる時間」がそれくらい大切だったということです。
そんな過酷な環境の中でも、精神的な豊かさを忘れなかった人もいました。
人に優しく接したり、自分の食料を分け与えたりする人もいたんです。
そんな人たちに共通していたのは、「生きる意味」を自分自身で見出していたということ。
どんなに過酷な環境でも、すべての人の精神的な豊かさを奪うことはできなかったのです。
『夜と霧』の感想
『夜と霧』では、強制収容所での生々しい生活を描いています。
収容所での悲惨なできごとを実際の体験者の視点から知ることができる本。
しかしこの本が伝えていることの本質は、「どう生きるか」ということ。
表面的には「収容所の体験記録」ですが、読んでいくうちに「生き方」について問いかけてくれる哲学的な側面があることに気付きます。
そのため、自分の生き方に悩んでいる人にもおすすめできる本です。
中には恐ろしい事実が書かれていますが、読み終わった時に決して暗い気分にはなりません。
どんな環境でも、人生を諦めずに前向きにとらえることができるか。
そんなことを感じさせてくれる本。
これは収容所のような過酷な環境下だけでなく、日常で悩みながら生きている人にも共通します。
就職活動や試験に失敗して悩んでいる人、人間関係で悩んでいる人、現代に生きている人も同じ。
「自分がもし収容所に入れられたら、どうなるかな?」と想像してみたのですが、今のところ無気力になって惰性で生きているだけの状態になってしまいそうです。
そうならないためにも、自分の生きる意味に向き合っていこうと思います。
そして、どんな状況でも自分に誇りを持って生きる姿勢の大切さを学びました。
最後に
アウシュヴィッツ強制収容所やユダヤ人迫害の実体験で必読なのが、『夜の霧』と『アンネの日記』だと思います。
どちらもリアルな体験が書いてあり、当時の様子がよく伝わってくる作品です。
二つの作品に共通することが、悲惨なできごとだったのにも関わらず、著者の明るさやユーモアが滲み出ているということ。
本を読むと、不思議と勇気付けられるんです。
ちょっと落ち込んでいたり、悩んでいる人にこそ読んでほしい作品。
興味が湧いた方は、ぜひ読んでいただければと思います。